鑑賞の手引き

 西浦の田楽を観に行かれる方に向けて、知っておくべき大事なこと、役立つ情報をご紹介します。

西浦の田楽 心得書

  • 祭りの最中にある指示には従うこと
  • 立ち入り禁止の場所には入らないこと
  • 非常に寒いため、しっかり防寒対策をすること
  • 神聖な祭りであるため、肉や魚を食べることはできるだけ避け、目立つ飲食は控えること
  • ゴミは持ち帰ること

立ち入り禁止区域は、下の会場図をご確認ください。

西浦の田楽は大切な神事であると心に留めて臨みましょう。

会場図

 当日の観音堂には、図に示すような立ち入り禁止の場所があります。

「グゾバヅル」という蔦や「しめ縄」が引かれた場所、鳥居の向こうへは行かないように気を付けてください。

 簡易休憩所や温かい食べ物を提供してくれる売店もありますので、寒さ対策を万全にしてお祭りを楽しんでください。

▲ 会場イメージ図

舞次第

 西浦の田楽は「地能」三十三番と「はね能」十二番の舞になります。事前儀式を終え、夜八時頃に始まると観音堂に朝日が昇るまで続きます。

 神事である舞の所作、儀式はすべて意味を持って定められており、能衆はそれを大切に守ってきました。

地能

全三十三番の舞は決まった役の担当があり、能衆の家で世襲制によって引き継がれる。
祭は能衆が庭上がりで舞庭へと入り、庭ならしや地固めという神迎えの儀式から始まる。

  • 一、庭ならし
  • 二、獅子舞
    • 観音様に奉納する舞。池島能頭、別当、所能別当が回数を変えて同じ舞を三度繰り返す。
  • 三、地がため
    • 大きな槍を使い、地中の邪気祓いのための舞。
  • 四、もどき:地がため
  • 五、つるぎ
    • 剣と扇を持ち、空中の邪気を祓うための舞。
  • 六、もどき:つるぎ
  • 七、高足
    • 竹馬に似た高足という道具に乗って舞う。これも邪気祓いの意味を持つ。
  • 八、もどき:高足
  • 九、猿舞
    • 猿の夫婦を演じた舞で、狂言問答が入る。
  • 十、ほた引き
  • 十一、御船渡し
    • 焚(タイ)に向かって観音堂から船を使って火を渡す。このとき見物人は渡された綱の下を通ってはいけない。
  • 十二、鶴の舞
    • 池島焚に向かって、別当、本堂別当、所能別当が舞う。最も静かで厳粛に舞い納める。
  • 十三、出体童子
  • 十四、麦つき
    • 詞唱をとなえ、能衆三人にくわがらという道具が与えられ、太鼓を打つ。別当が麦つきの詞唱をとなえる。
  • 十五、田打ち
  • 十六、水な口
  • 十七、種まき
  • 十八、よなぞう
    • 「ててっこ」という旦那役と下男の「よなぞう」役が牛をめぐって狂言問答をする。よなぞうが牛を買い、芝刈りと芝踏みをして、最後に二人で牛を洗う。牛も面をつけた能衆が演じ、走り回る。
  • 十九、鳥追
    • スリササラという道具を肩にかつぎ、農作物に害をなす鳥や獣を追い払う舞
  • 二十、殿舞
    • 殿様の持ち物である扇、小刀、長刀、弓ぼこ、槍、大がさ、弓矢、弓についてそれぞれの問答と舞を繰り返す。
  • 二十一、惣とめ
    • 「花さざら」と「はんこいつき」という節に分かれ、それぞれの節でスリザサラと唱、笛や太鼓が重なった華やかな舞。
  • 二十二、山家惣とめ
    • 母親役(別当)とねんねんぼーしという人形を背負った子守役(池島能頭)による舞と狂言問答。子守の箒で頭をなでてもらうと子宝を授かり、厄難除けになるとされる。
  • くら入れ
    • 能衆が一度別当家に帰り、夜食休憩をとる。本堂別当だけは舞庭の見張りをし、残った稗酒がまかれる。約一時間程度の間が空くため、ここで仮眠や間食をとって休むことができる。
  • 二十三、種おり
    • 別当らが五方に拝し、養蚕業を模した舞を行い祈願する。
  • 二十四、桑とり
  • 二十五、糸引き
    • まゆから糸を取る姿を模した舞で、ござにくるまった能衆が外で振られる扇に合わせて上下し、「まゆ」をのぞかせる。
  • 二十六、餅つき
    • 餅つきを模した舞で、太鼓を臼、まるめた布を餅に見立てて、杵でつく。
  • 二十七、君の舞
    • 親役と子役二人による問答を交えた舞。
  • 二十八、田楽舞
  • 二十九、仏の舞
    • 六観音が降りてきたことを表す舞で、それぞれの面をつけた能衆が並んで舞庭を三度回る。タイマツの火に照らされ、神秘的な見どころの一つ。
  • 三十、治部の手
    • 三十番以降は面だけを変え、道具や楽も同じ舞を繰り返す。
  • 三十一、のたさま
  • 三十二、翁
  • 三十三、三番婁き

はね能

地能とは異なり、ほぼ全ての舞に面をつけて舞う。能楽を元にしたものもあり、見て楽しめる舞となっている。

ほぼ全ての舞に唄いが入り、その内容に耳を傾けると舞の様子が分かる。

  • 一、高砂
  • 一、しんたい
    • しんたい」の面をつけた役が登場し、飛び跳ね軽快に舞う。
  • 一、梅花
    • 「鬼」面をつけた鬼役の力強い舞。
  • 一、観音の五方楽
    • しんたいと鬼との戦いを表した舞。
  • 一、山姥
    • 山の精である山姥を表した舞。
  • 一、しょうじょう
    • 酒好きな海の妖精である猩々(しょうじょう)の舞。
  • 一、くらま
    • しんたい役と鬼が再び対峙する舞。
  • 一、さおひめ
    • 春の神様である佐保姫の舞。しんたいと女面をつけた佐保姫夫婦が舞う。
  • 一、野々宮
  • 一、やしま
    • 源平合戦の屋島の戦い、壇ノ浦の戦いを表した舞。
  • 一、うるう舞
    • 旧暦の閏年のみ行う。舞と面はさおひめと同じだが、別当が加わり、3人が舞庭を回る。
  • 一、橋べんけい
    • 弁慶(鬼面)と牛若丸(しんたい)の京都五条橋での戦いの舞。

番外

祭りの最後になる締めくくりの舞と儀式で、別当が中心となる。

このとき舞庭には縄が敷かれ、儀式が終わるまで絶対に入ってはいけない。

  • 一、獅子舞
    • 薬師に先導され、獅子が現れる。楽堂を正面にしたござに来ると、ゆっくり五方を拝して回る。
  • 一、しずめ
    • 祭りのために観音堂に迎えた神々をお送りするための舞。
  • 一、はらい
    • 火災除けの火王(ひのう)と水難除けの水王(すいのう)の面を、別当がそれぞれつけて祈り、厄を祓う。